ハワイアンキルトを通してアイヌ刺繍との出会い

先日、北海道の白老町に招待いただき、初めて行かせていただきました。アイヌの人たちが町の歴史の基礎を築き上げ、アイヌ文化の振興が町づくりの一つになっています。2009年の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」によって提言された「民族共生の象徴となる空間」を白老町に整備する計画により、2020年度までにポロト湖畔に「民族共生象徴空間」として国立アイヌ民族博物館が完成予定になっています。
そしてその一環でみんなの心つなげる「巨大パッチワーク」づくり計画が立ち上がっています。ハワイアンキルトとのコラボレーションはまさにそこに入っています。今回はそのイベントに先立ち、アイヌ刺繍の存在を知ることができました。アイヌ刺繍を教えていただいたので今日はそのことについてお話しますね。

アイヌ刺繍を施した着物

アイヌ刺繍を施した着物

アイヌ文様には男の人が木や骨、ツノに彫刻をして表現する文様と、女の人が布に刺繍をして作り上げる文様があります。アイヌの刺繍の多くは衣服に施され、衣服にはアットゥシ、カパラミプ、ルウンペ、チカラカラペ、チヂリの5種類があります。アットゥシは樹皮衣と言われ、オヒョウやシナノキなどの内皮繊維で織られた衣服です。アイヌ語ではアットゥシといいますが、「アツシ織」と日本語風に呼ばれることもあります。カパラミプは土台に白い布を重ね、リバースアップリケをして、刺繍をするのが手法。 ルウンペはテープ状の布のアップリケで模様を描き、刺繍する方法。布はバイアス布などを使わず、縦布、横布を使い、タックをとり、縫って角を丸く縫うのが特徴です。まつり縫いの針目は目立たせず、コーチングステッチがよく使われます。 角はツノを出すのが特徴で、これは魔除けを表しています。これはおもに白老地方に伝わります。チヂリは刺繍だけで模様を描く方法です。チェーンステッチがよく使われます。こちらも角はツノを付けます。古い着物に施された刺繍の技法は数十種類にも及んでいますが、現代のように情報が溢れる社会とは違い、わずかな情報しかない中で、作り手は刺繍の技法を自分なりに発展させ、現在の技術でもおよばないほど豊かな刺繍を施していました。
アイヌ文様の基本は「モレウ」と呼ばれる渦巻き模様と、「アイウシ」と呼ばれるトゲのように尖った模様とで構成されます。

カパラミプで作成に1ヶ月くらいかかります

カパラミプで作成に1ヶ月くらいかかります

ルウンペ

ルウンペ

チヂリ

チヂリ

白老町では「フッチコラチ」というアイヌ刺繍のグループがあります。このサークルは毎週木曜日にミーティングがあるそうです。現在メンバーは13名くらいで、体験教室もされています。代表の 岡田育子先生はアイヌ文化奨励賞を取られたこともあり、35年間もの長きにわたりアイヌ伝統文化の知識・技能を習熟し、北海道アイヌ伝統工芸展における優秀賞をはじめ、数多くの受賞歴があります。平成9年「アイヌ文様刺繍の基本技法を学び、日常生活で用いられる作品を製作し、いつでも、どこでもアイヌ文様に触れられるようにすることで、アイヌ文様が生活の一部になってもらいたい」との思いから、アイヌ文様刺繍サークル「フッチコラチ」を立ち上げられました。白老アイヌ協会の女性会員有志とともにアイヌ文様刺繍の勉強会を開催するなど、向上心も高く、後進の指導にも熱心に取り組む貴重なアイヌ文化伝承者であります。このかた直々にアイヌ刺繍を学ぶことができ、本当に幸せでした。小さいチェーンステッチを保っていくには、やはり練習が必要です。文化や歴史を学びながらのレッスンは至福の時でした。
岡田先生は現在、次の講師を育成する12回の3ヶ月のコースの講師もやられています。アイヌ刺繍の伝統を絶やさないようにするために、町をあげてこのような取り組みをされています。

レッスン風景、左が岡田先生

レッスン風景、左が岡田先生

コースターの完成図

コースターの完成図

講師養成のレッスン風景

講師養成のレッスン風景

ちょうど訪れた時には町の白老町文化祭も行われていてアイヌ刺繍の展示コーナーもありました。町全体でのアイヌ文化への熱が伝わってきました。

白老町文化祭

白老町文化祭

フッチコラチのブース

フッチコラチのブース

手作りグッズがたくさん展示してありました

手作りグッズがたくさん展示してありました

そして千歳空港近くの開拓の村、北海道博物館の中にも、アイヌ民族の展示などもあり、重ねて訪れると興味深い内容を読むことができます。売店にはアイヌ刺繍の本も販売しており、こちらでもう少し勉強してみようと思いました。みなさんも日本各地の文化や手芸などに出会うチャンスがあれば是非トライしてみてくださいね!

北海道博物館

北海道博物館

アイヌ刺繍の本

アイヌ刺繍の本

By アン

☆ハワイアン航空、日本語機内誌「ハナホウ」2018年10月から12月号に10ページに渡り、紹介していただいています。ハワイアン航空に乗られる方、ぜひご覧ください!

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筆者プロフィール

藤原小百合アン
藤原小百合アン
アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2010年スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)にてキルト展を開催。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。2012年7月、電子本「キルトストーリー」を発売。2012年9月、スパリゾートハワイアンズへ、フラガール・フレンドシップキルトを寄贈。2013年11月より、イオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを開始。2021年7月には誠文堂新光社より「ハワイアンキルト パターンとステッチの魅力」の増補改訂版を発売。ハワイ、日本での展示会やレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。ハワイ在住34年目。